もくじ
プリツカー賞とは
なぜ建築界のノーベル賞とよばれるのか?

「建築家にとってこの賞は、科学者や作家たちにとってのノーベル賞のようなものだ」
Architecture View; What Pritzker Winners Tell Us About the PrizeThe New York Times 1988年5月28日
1988年、ニューヨークタイムズ誌に以上のように書かれたことが
「建築界のノーベル賞」と紹介されるようになった由来だそうです。
このとき、プリツカー賞は設立されてからすでに9年が経っており、元々建築界のノーベル賞を目指して
発足されたものではないことがわかります。
どんな人がプリツカー賞を授与してきたか?

1979年に設立された プリツカー賞ですが、
第1回目の受賞は「グラスハウス」で知られるアメリカの建築家フィリップ・ジョンソン氏でした。
これは元々アメリカの実業家ジェイ・プリツカーと、その妻によって 設立された背景も関係があることでしょう。
今日ではプリツカー一族が運営するハイアット財団( ハイアットホテル&リゾーツのオーナー)
によってブロンズのメダルと共に10万ドルの副賞が授与されています。
このメダルには最古の建築書を手掛けたウィトルウィウスの格言である
堅牢/Firmness,便利/Commodity ,喜び/DELIGHTが刻まれています。
ちなみにメダルのデザインは、ギャランティビルなどのアメリカの高層建築の名作を手掛けてきた
巨匠ルイス・サリヴァンが担当しています。
プリツカー賞は日本人建築家の割合が多い?

これは全40人のプリツカー賞受賞者を出身国で分けてみると、
日本人の割合が最も多く、その人数は 8人だそうです。
これまで日本人で受賞したのは8人のお名前を下記に挙げておきます。
丹下健三(1987年)
槇 文彦(1993年)
安藤忠雄 (1995年)
妹島和世 (2010年)
西沢立衛 (2010年)
伊東豊雄(2013年)
坂 茂 (2014年)
磯崎 新(2019年)
2020年は誰が受賞するのか?

事前にユーザーの予測投票を行っていたアーキデイリーによると、
最も得票率が多かったのは、母国のデンマークを拠点に、世界中でプロジェクトを手掛ける
「BIG」を主催するビャルケ・インゲルス( Bjarke Ingels)でした。
ランキングは以下となっています。
ビャルケ・インゲルス Bjarke Ingels (12.3%)
デヴィッド・チッパーフィールド David Chipperfield (9.5%)
隈研吾 Kengo Kuma (6.3%)
スティーブン・ホール Steven Holl(5.6%)
フランシス・ケレ Francis Kéré (5.4%)
タチアナ・ビルバオ Tatiana Bilbao(5.1%)
フリーダ・エスコベド Frida Escobedo(4.8%)
サンティアゴ・カラトラバ Santiago Calatrava(4.3%)
スミルハン ラディック Smiljan Radic(3.8%)
アイレス・マテウス Aires Mateus(3.3%)
引用:archdaily
上記のランキングより、上位4名の建築家に絞ってご紹介したいと思います。
ビャルケ・インゲルス
最も前評判の高かったビャルケ・インゲルス 氏は
元々レム・コールハースの主催するOMA (office for metropolitan) でキャリアを積んでいたことでも知られています。
その建築観もユニークで、まるでレゴブロックを自在に操るようにして、(デンマークは元々レゴ創業の地)
ソリッドな建築をアイコニックに、かつ戦略的にデザインすることで有名です。
僕も学生時代には、彼のダイアグラムや建築にとても影響を受けて
設計課題では、彼の作品を模倣して先生に叱責された記憶があります。。。
デイヴィッド・チッパーフィールド
2位は イギリスの建築家 デイヴィッド・チッパーフィールド ( David Chipperfield)で、
CBE( 大英帝国勲章 )という建築界への貢献をたたえる賞を授与されています。
リチャード・ロジャースや、ノーマン・フォスターの事務所を経て独立したチッパーフィールドは、
純粋で、簡素化された建築デザインが特徴です。
親日家としても知られ、2017年には兵庫県で、猪名川(いながわ)霊園という霊廟建築を手掛けています。 カラーコンクリートによってランドスケープとひとつながりにつくられた休憩所と礼拝施設で、
とてもよく風土に溶け込んでいます。
https://luxe.nikkeibp.co.jp/atcl/japan/072500005/
隈研吾
3位は国立競技場を手掛けた建築家、隈研吾 (Kengo Kuma )
最近では本の執筆も手掛け、メディアでもよく見かけるようになり、すっかり時の人となった印象です。
国内では国立競技場や浅草文化観光センターが有名で、
木材をふんだんに使ったあたたかみのあるデザインが特徴の世界的な建築家です。

著書も多く、僕も先日氏の著書である「点・線・面」を読みましたが、
網羅的な知識が、やわらかい文章で綴られていて建築書にしては
非常に読みやすい部類に入るかと思います。ぼくの 「点・線・面」 の書評はこちらです。
スティーブン・ホール

4位はアメリカの建築家スティーブン・ホール。
毎朝、クロッキー帳に水彩絵の具で、抽象画のようなスケッチを描く習慣で知られるスティーブン・ホール。
彼は、曲面や直線、様々な色といった、まさにキュビスムの純粋なアーティストのように
建築を豊かに、鮮やかに、アイコニックに組み立てて行きます。
そんな独特な彼の設計手法にも惹かれていた学生時代の僕は、
彼の手がけた福岡県のネクサスワールドの集合住宅・スティーブンホール棟の超難解な立体的造型、
留学中には真っ白な抽象世界に印象的な弧を描くスロープが忘れられない、
フィンランドのヘルシンキ現代美術館などを訪れて、さらに衝撃を受けるのでした。
個人的には、これまで挙げた建築家の中では、最も好きな建築家なので、
今年受賞できるといいなと思っています。
まとめ

いかがだったでしょうか。
今回はプリツカー賞についてまとめてきました。
2020年度のプリツカー賞ももう間もなく発表となります。
今年は一体誰が受賞されるのか、とても楽しみです。
2020年プリツカー賞発表
2020年のプリツカー賞が発表されました。
ことしの受賞者はGrafton architectsの
イボンヌ・ファレルとシェリー・マクナマラ でした。

左:シェリー・マクナマラ 右:イヴォンヌ・ファレル
引用:https://www.biennialfoundation.org/2017/01/13901/
彼女たちの作品とプロフィールについてはこちらにまとめていますので
ぜひご覧いただければとおもいます。
以上です。ご覧いただきありがとうございました!