建築×ライフ

ホールの舞台の床仕上げ材にはやっぱりヒノキの集成材がおすすめな理由

2020-02-10

「檜舞台」という言葉は建築に従事していない一般の方にとっても

馴染み深い言葉であると思うが、ホールの設計に携わっていた時に

そもそもなぜ舞台にはヒノキが使われるのかと疑問に思い、

メーカーや施工者、音響や舞台設計に関わる

各関係者からのヒアリングを行ったことがある。

結論から言うと、舞台の床材には特にこだわりがなければ

ヒノキ集成材横張り」が最も適していると言えるだろう。

その理由について解説を行う。

樹種はヒノキ材がほとんど

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by Chelsea Bock

一般的に木材は大きく針葉樹系と広葉樹系の二通りに分類され、

針葉樹系は柔らかい材ヒノキ・マツ・スギなど、

広葉樹系は固くカエデ・ナラ(オーク)・クルミなどがある。

日本の舞台の床材において圧倒的に多く使われるのが針葉樹系のヒノキである。

これは、一般的なコンサート専用ホールでは、

チェロのピンが刺せるよう硬すぎないヒノキ材が望ましいからである。

広葉樹系のナラ(オーク)はヒノキに比べて硬く、

エンドピンが挿しづらいためあまり用いられないが、

平土間可変ホールなど移動観覧席等を舞台上部に持ってくるなどで

耐久性が必要になってくる場合に用いられることがある。

事例としては、杉並公会堂の小ホールなどが挙げられる。

ここに挙げているのはあくまで日本国内置ける傾向で、

海外においては広葉樹系のカエデが採用されるケースが多い。

「檜舞台」という言葉は日本独自のものであるのだ。

無垢材か、集成材か

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zcool.com.cn

無垢材とは、接着剤を使用せずに材料のまま木材を製材した材料であり

集成材とは、接着剤を使用して薄く加工した木材を張り合わせた素材のことだ。

今回の記事ではその特性までは触れないが、

多くのホールの舞台床材では集成材を採用している。

無垢材を採用しない理由としては以下である。

  • 無垢材は集成材に比べ、コストが割高である。
  • 集成材の方が狂いが少なく、施工上扱いやすい。
  • 無垢材は乾燥する時間が必要で、予めスケジュールを見込んでおく必要がある。

しかしながら無垢材の素材感は大変豊かであり、

格式をプライオリティの第一義に置くホールにおいては

しばしば用いられることがある。

無垢材を使用したホールとして挙げられるのが、

国立劇場、歌舞伎座(東京・大阪共に)、京都南座等であり、

これらの舞台においては、ヒノキ無垢材が利用されている。

節ありか,節無しか

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by Petr Kratochvil

使い勝手からいくと、舞台上は平滑な床であることが第一であり、

節などの引っかかりの可能性のあるものは少しでも避けるに越したことはない。

見栄えにも勿論ない方がすっきりするだろう。

無節材はコストもかかってくるので、予算上無節とするのが難しい場合は、

一つ下のランクである「特選上小節」を採用することもある。

フローリングの張り方向にセオリーはあるのか。

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zcool.com.cn

フローリングの張り方向には、2種類ある。

・舞台の縁線を基準に水平に張る「横張り

・舞台に対して垂直に張る「縦張り

多目的ホールにおいては横張り」が多く採用されている。

理由は舞台装置等を舞台袖まで引きずる際に、横張りだとスムーズであるからだ。

このとき、縦張りだと板の段差が、滑車や歩行に影響を与えてしまう。

更に言うと横張は、平台やパネル、ひな壇等を設置する際に、

舞台縁の框に合わせた水平目地に合わせた舞台レイアウトを行い易い

というメリットもある。

では、縦張りの需要はどこにあるのかといわれると、

しばしば音楽ホールにおいて採用されているようだ。

理由は、縦張りとすると、舞台から客席に向かって木の繊維方向が流れるので、

音の反射が良くなるという一定の演奏家の意見によるものだそうだ。

これは音楽の素人ながら自分が舞台に立ったところを想像してみるとわかる気もする。

しかし、音響設計に従事する関係者にヒアリングしてみたところ

実際には、舞台の床仕上げ方向についての音響実験や科学的な相関については

現在のところでは明らかにされておらず

そもそも床構造仕上げとその下地物理的特性と演奏者との間では

定量的な判断が難しいことから、音響的考察は難しいとされている。

現に、横張りの舞台を持った音楽ホールの方が割合は多い。

更にいうとホールでは、前述している材料の狂いの観点から

集成材が多く採用されている。仮に集成材を採用した場合は、

既に木材はスライスされて張り合わされているので、

木の繊維方向もあまり関係なくなってくる。

演奏者の心理的な側面にもよるが、

上記の理由からよほどのこだわりがない限りは、

どんなホールの舞台においても横張りを採用した方が望ましいと言えるだろう。

まとめ

・日本においてはピンが刺しやすいヒノキがよく用いられている。

・演目の際のひっかかりの懸念があるので節はない方がよい。

・コストバランスと施工性に優れ、反りの少ない集成材が一般的である。

・床の張方向と音響効果の関係性は科学的には証明されていない。

・床の張方向は使いやすさを考慮すると横方向の方が使いやすい。

音楽に関わることがなければ

特に意識もしてこなかったという人がほとんどである

ニッチなホール設計の世界だが、いろんなことを知り始めると

コンサートや観劇なんかでホールに訪れる機会が楽しみになってくる。

もし訪れる機会があるなら、舞台の床をチェックしてみると、

きっとそのホールのコンセプトや、設計者の想いが見えてくる。

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