学生時代、ぼくは海外文学と同じ熱量で、建築書にもその読書熱を傾けてきました。
建築書というのは、専門外の人からするととっきつずらそうだとか、高尚ぶっているとか
そんなことを言われがちです。無論そういう本が多いことは否定できません。
なぜなら建築学という学問は元来ブルジョワとアカデミズムによって牽引されてきたからです。
しかしながら、どんなに貧しい国にも、どんなに環境が厳しい場所にも
人がそこに住んでいる限り、建築は必ずなんらかの形でそこに存在ます。
雨をふせぐという基本的な機能の元につくられたその形さえ、
大昔から大して変わってはいない、至極、原初的なモノなのです。
素人目にも見ていいてかっこいいとか、かっこわるいとか、使いづらいとか、
そういたことは即座に判断できてしまうぐらいなので
誰にだって建築について語る権利はあるし、知る権利は当然あります。
建築という分野の裾野が少しでもひろがるお手伝いがぼくにできるなら、
ぼくはよろこんで今後も建築良書や建築小物についてシェアしていきたいと思います。
もくじ
デンマーク留学の決め手【一点もの近代建築と前衛的現代建築】

僕は学生時代、デンマークのコペンハーゲンに建築留学をしていました。
理由はデンマークという国、特にコペンハーゲンというまちが
古典建築から現代建築への移行の過渡期にあるのではと思ったからです。
BIGやKOBEといった元OMA事務所出身の2大アトリエにヘニング・ラーセン事務所など
大型建築を主戦場にした組織設計アトリエが名を連ねるコペンハーゲンの港湾付近では
すでにモダンな建築ががんがん建設されています。
そんな慌ただしい開発から、すこし距離をとったコペンハーゲン市内には、
竣工から何十年、何百年と経った古い建物が軒を連ね、
内部には美しいデンマーク家具がレイアウトされたショップやミュージアムがたくさんあります。
ぼくはそんな、レムクールハースでいうところのSサイズの建築から
XLサイズの建築までが混在するデンマーク・コペンハーゲンという都市での生活を経て
デンマークの建築がもっと好きになりました。
今回はそんなデンマークの建築を知るための、入門編としておすすめしたい書籍をご紹介すます。
デンマークおすすめ建築書6選

1_経験としての建築 /S.E.ラスムセン
ヨーン・ウツソンが師事した建築家E・S・ラスムッセンが自身の建築理論をわかりやすく解説した書籍。タイトルにもあるように「経験」を重視した視点から建築を解説。わかりやすい平易な文章で書かれているが、その内容はとても深いです。
近代建築隆盛の一端を担うプロポーション=視覚芸術としての
ゲーム的建築運動が席巻した欧州において、
目に見える美しさだけではなく、手ざわりや、素材感といった五感でたのしめる
ヒューマンな経験としての建築を、北欧建築を事例に紹介した本。
僕の建築観の決して小さくはない礎を築いた、バイブルといもいえる書です。
邦訳版より、英語版の方が入手しやすいし表紙もかっこいいので、
英語ができる方は是非原文で読むことをお勧めしたいです。
著者はデンマークの建築家S・E・ラスムセンで、
氏はシドニー・オペラハウスの設計者ヨーン・ウッツォンが師事した大御所中の大御所です。
2_デンマーク家具のデザイン史
内容(「BOOK」データベースより)
本書では、デンマーク家具のデザイン史について、コーア・クリントが礎を築いた萌芽期(1910~30年代)から、黄金期(40~60年代)、衰退期(70~90年代中頃)、再評価期(90年代中頃以降)を経て、現代に至るまでの変遷をわかりやすく紹介しています。
そもそもデンマークとは建築もさる事ながら、家具の名作に恵まれた国です。
この本はそんなデンマークの家具サクセスストーリーを体系的に網羅しています。
本書を見れば近所のカフェやレストランといった
身近に据えられた北欧デンマーク家具のウンチクを網羅できるでしょう。
紙面レイアウトやわかりやすく初心者でも読みやすい本です。
実際にデンマーク家具は、正規品を買おうと思うとかなりお高いので
まちなかでよくみるのはレプリカ品などがおおいでしょう。
こちらの記事では名作椅子とそのレプリカ品を紹介していますので、
もし、自宅に名作家具を置きたいけど、コストはあまりかけられないという方は
是非一読いただければと思います。
3_ヨーン・ウッツォンJorn Utzon : Drawings and buildings
デンマークが生んだ世界的建築家ヨーン・ウッツォン。
表紙はオレンジの皮に着想を得た説明不要の名シドニーオペラハウスですが、
他にも見応えあるウッツォン建築を堪能できるのが本書です。
個人的には、コペンハーゲン郊外にあるバウスベア教会がおススメです。
バウスベア教会を実際に訪れた感想や、アクセスなども含めた記事はこちらです。
洋書ですが、英語が苦手な方も写真と豊富な資料で彼の魅力を十分に楽しめる一冊です。
4.BIG RECENT PROJECT
BIGは今最も勢いのある現代建築家の一人であるといえます。
元はOMAのレム・クールハースに師事したビャルケ・インゲルスは、
手掛ける建築もユニークで、デンマーク発祥のレゴブロックを想起させるような、
アイコニックな建築フォルムをしています。
そのアイコニックな建築フォルムをキャッチーでストラテジックな
ダイアグラムでまとめ上げる手法は当時の僕も含め、
全国、全世界の建築学生が一度は真似をしてみたに違いないでしょう。
本作はRECENT=いわゆる近作というよりは、彼らのキャリアのうち、比較的初期作品についての
プロジェクトブックであると言えます。
米建築家フランクロイドライトの全作品集出版などでも知られる
今は亡き建築写真家 二川幸夫さんによる圧倒的な編集クオリティとビャルケとの対談も必見の一冊です。
5.ヤコブセンの建築とデザイン
内容(「BOOK」データベースより)
今もなお愛され続けているヤコブセンのデザインしたプロダクトは、実はヤコブセンの設計した建築の中で使われるためのものだった。ヤコブセンのすべてを日本で紹介する初の作品集、ついに刊行。
セブンチェアやアントチェアの産みの親ヤコブセン。
これらの椅子を見たことのないひとはまずいないでしょう。
しかしながら彼のその才能は家具にのみ留まるものではありません。
慎重に決定されたプロポーションや、職人的ニッチなディテールの数々。
現代という時代が失った、クラフトマンシップの真髄は本書と彼の仕事にあると言っていいでしょう。
6.フィン・ユールの世界
内容(「BOOK」データベースより)
1950年代、世界を席倦した北欧デザインは、この男の存在なくして語れない。「世界で最も美しい肘掛けを持つ椅子」と讃えられるNo.45をはじめ、もはや伝説となったニールス・ヴォッダー工房製の椅子の数々。さらに家具類、日用品、インテリアデザインに至るまで余すところなく作品を網羅。すべてのファニチャーデザインファンに贈る待望の決定版。
フィン・ユールはデンマークの家具デザイナーで、
その彫刻のように優雅な家具デザインは世界的な評価を得ています。
それもそのはず、フィン・ユールは彫刻家のヘンリー・ムーアやジャン・アルプの作品に傾倒していからです。
彼の生み出す家具は、なめらかで、生物的で、どこか、はかなさもたたえた
独特の緊張感をまとっています。その洗練されたデザインを余すところなく伝えた本書を初めてみたときは
これまでフィンユールを知らずに生きていたことが損な気分になったほどでした。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回はデンマークの建築本についてご紹介してきました。
初心者も手に取りやすい有名どころを選定したつもりです(経験としての建築以外。)
デンマークの建築については、こちらの記事にもまとめていますので是非ご覧になってください。
今回は以上になります。