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建築×ライフ

デンマークでみるべき3つの教会【見どころから行き方まで】

2020-02-15

学生時代に留学とインターンシップを兼ねて北欧諸国をまわっていたことがあります。

目的は、修士論文のための研究調査で、

その一環で北欧の古建築から現代建築まで、マニアックに建築巡礼してきました。

今回はそんなフィールドワークで出会った、すばらしい教会建築を紹介しようと思います。

デンマークの教会建築の魅力

ぼくなりにデンマークの教会建築の魅力についてまとめてみました。

  1. デンマークならではの洗練された家具
  2. 飾らない内部空間
  3. 親しみやすい外観

それぞれ具体的に見ていきます。

1.デンマークならではの洗練された家具

例えばグルントヴィークス教会/Grundtvigs churchには、

設計者の カーレ・クリントKaare Klint による洗練された椅子が置かれていて、

これがとても空間になじんでいます。

実際に実務を始めてみてわかったことが、建物の設計を手掛ける建築家というは、

建物が完成するその時まで、自分の設計した空間のことを考え続けているということです。

時には家族以上に。そこまで空間のことを考え続けた建築家が、

自分でその空間にあう椅子をデザインするのだから調和がとれないわけがないのです。

2.飾らない内部空間

教会というものになじみのない我々日本人は、教会というと華やかなステンドグラスに繊細な彫刻、

天井が恐ろしく高いゴシック的空間を連想します。

そんなステレオタイプからぼくはさぞこってりした内部空間が待っているのだろうと身構えていたのですが、

いざ教会に入ってみると、 デンマークにある教会の内部空間は

どれも拍子抜けするほどシンプルなのです。

肩透かしをくらったかのようなこざっぱりした飾らない祈りの空間は、

文化も、宗教も異にする日本人の僕の感性をもってしても居心地のいいものでした。

3.親しみやすい外観

ここに紹介するデンマークの教会建築は、外身はいわゆる教会らしくはないです。

バウスベア教会や、シュバンスホルト教会、ヴァンゲデ教会は、

規模もそこまで大きくないし、見た目には図書館とか公民館みたいな市民的な見た目をしています。

デンマークで最大規模のグルントヴィークス教会も、

見た目には教会というよりはどこかの要塞か宇宙船遺構のようです。

そんなある意味で崇高な宗教的世界観から自由なデンマークの教会建築は

その親しみやすさから多くの市民に愛されています。

デンマークでぼくが訪れた教会

ここからは僕が実際に訪れたデンマークの教会建築について紹介していきます。

バウスベア教会/Bagsværd Church

教会外観
外観

設計

設計者は、シドニーオペラハスの設計でお馴染みのヨーン・ウッツォンJørnUtzonです。

見どころ
多彩な光の取り入れ方

切妻のトップライトに照らされた明るい側廊に、

その中の雲のように滑らかな曲面天井がなんとも印象的な教会です。

音響効果を考えて作られたというこのうねる天井は、トップライトからの光によって、

ザラザラとした肌理の表面を、まるでひとりでに発光する羊羹のようにぼんやりと照らされています。

この焦点が定まらないような光の機微は、繊細な北欧の空模様に通じるものがあるのではないでしょうか。

ある意味現象的な霧のような光の体験ができる特別な教会です。

内観1_特徴的な曲面天井をやわらかく舐めるハイサイドライトからの光

日本風?意匠

随所に親近感の湧く東洋的意匠が散りばめられたこの教会は、僕にとってはとても入りやすい雰囲気でした。

かと言って内部が西洋っぽいかと言われればそんなこともない。

どの断面をとっても教会らしい教会に見えない無国籍無宗教な、とても不思議な教会です。

この軒先と木格子の意匠なんかは、まさに日本建築を彷彿とさせます。

灌木も、日本の庭先にそのまま植わってそうです。

廊下の天井は、ガラス屋根によるトップライトで常に明るい。

トップライトがあえて切妻型をしていたり、細長い回廊に木建具の表情の相性なんかはここが西洋の教会建築家であるということを忘れさせます。

アクセス

QC6V+PJ バウスベア, デンマーク Gladsaxe Municipality

コペンハーゲンからは少し離れた郊外にあるこちらの教会は

ローカル線BのSkovbrynet駅から徒歩十分程度。

16:00には閉まってしまうので、訪問時間には要注意です。

シュバンスホルト教会/Stavnsholtkirken

外観
外観
設計

設計はパリの新凱旋門を手掛けた、

ヨハン・オットー・フォン・スプレッケルセン Johann Otto von Spreckelsen

新凱旋門は、ぱっと見は凱旋門からは左程距離が離れていないように見えますが

歩いてみると、1時間以上はかかった記憶があります。(約5km)

そんな錯視効果を操る策士なスプレッケル氏は、

デンマーク出身で地元にも個性豊かな建築を手掛けていました。

見どころ

黄色い森山邸?

森山邸と言えば、建築を学ぶものなら誰しも知る、

建築家ユニットSANAAの西澤立衛による現代住宅建築のマスターピースです。

冒頭の写真でもわかる通りこの教会は、森山邸的な

いくつもの小さな小塔のようなボリュームが集まって全体を構成しています。

日本が柱=点、線の建築文化であるのに対して、

西欧は壁=面の文化圏であることはしばしば語れますが、

この集落的で、離散的な佇まいはなんとも点・線的で、東洋的でもあります。

この小さなタウンスケールのボリューム感は、

生姜色のノスタルジックなレンガとも相まって周辺の緑や住宅によく調和しています。

デンマークのルイス・カーン?

僕はアメリカの巨匠建築家 ルイス・カーンが大好きです。

カーンの建築をそこまで多く見てきたわけではないが、それでも図面なんかは学生のころトレースしていました。

正方形、円などの幾何学の反復ダブルグリッドや、シンメトリー45度回転といった

彼のきわめてシンプルで原理主義的な手法で生まれた、力強く、 ともするとブルータルな立ち姿に

ずっと惹かれ続けています。

この教会の内部空間、特に講堂を訪れたときにカーンのにおいを感じたのは、必然かもしれません。

教会内観
講堂

正方形な平面を45度に振ったシンメトリー 什器レイアウトや

天井面の骨太なリブを即物的に表現したワッフルスラブは、彼の得意とする手法だったからです。

洞穴の入り口から入るように厳かな壁際に設けられたトップライトの表現なんかも

カーンの ファースト・ユニタリアン教会や、キンベルなんかでも繰り返し出てきます。

スプレッケルセンが手掛けた他二作の国内教会作品も同様です。

僕が訪れたヴァンゲデ教会 Vangede Church に、

ユトランド島の聖ニコライ教会St. Nicholas' Church, Esbjerg、

二作ともそのユニークな平面形や光の取り方からそこはかとなくカーンを感じるのです。

ヴァンゲデ教会 Vangede Church / ヨハン・オットー・フォン・スプレッケルセン Johann Otto von Spreckelsen

1929生まれで1987年、58歳で亡くなった彼は、60年代~70年代に 遠いアメリカで主要作品を発表していた

カーンとの間に接点があるような記録を僕は発見できないでいますが、

カーンの影響を指摘する書もあるにはありました。

が、それが何故なのかを語っている論考は少ないようです。

時間が取れればじっくりと調べてみたいテーマです。

アクセス

Stavnsholtvej 25, 3520 Farum

バウスヴェア教会からさらに 3駅B線に乗って終点のFarumという駅で降りて徒歩。

近くにある美しい二つの湖、ファールム湖とフーア湖は遊泳やボートレンタルも可能なので、

サマーシーズンに訪れても気持ちのいいエリアです。

グルントヴィークス教会/Grundtvigs church

教会
外観
設計

設計は 建築家のクリント親子二代で行われました。

ペーター・ヴィルヘルム・ジェンセン・クリント Peder Vilhelm Jensen-Klint

1913年に設計競技で当選したクリント氏は、1930年に亡くなるまでに、 特徴的な塔上のタワー部分を完成させ、以後は息子の カーレ・クリントKaare Klint が内装工事やその他の業務を引き継ぎ、 1940年、コンペ当選から27年もの歳月を経て完成させました。

見どころ
レンガでできているのにSFチックな表現主義的外観

各立面が大きく異なるのは教会建築において割とよくある話で、

この教会にも同様西側の表情と、東側の表情は大きく異なります。

東側からみると、赤い屋根瓦の切妻屋根に、薄茶けたレンガ肌をした 壁のテクスチャは、

まちでよく見かけるいわゆるザ・デンマークともいえる意匠なのですが、

西側外観は、それとは打って変って、一枚の背の高い壁が天高くそびえているだけなのです。

ところどころ、スリット状のリズミカルな陰影が印象的な穿たれていて、

遠くから見るとSFに出てくる要塞のような佇まいです。

この教会が設計された 当時のヨーロッパ とう時代は、

なるほどかのアインシュタインタワーのような

表現主義 様式 が流行した渦中だったのです。

シンメトリーな周辺の住居風景などとも相まって、

遠くから見ているとまるでひとつの近未来絵画のようです。

この反り立つ壁面の高さは約50メートルと言われていますが、

実際に近くに行ってみると、もっと高いのではとも感じます。

もしやコペンハーゲンで最も高いのではと思い、調べてみましたが、

最も高い建物はクリスチャンボー城の106Mで、その次は コペンハーゲン市庁舎塔の105.6mでした。

教会建築に割にミニマルな内部空間

高さ22メートルの大空間は、驚くほどあっさりとして、静かでした。

ゴシック式の教会のような、壮麗で豪奢な内部体験とは、質の異なる体験でした。

これは北欧の人々にとって貴重な日光を賛美する為に、

あらゆる装飾をそぎ落とした結果なのかもしれません。

カーレ・クリント のあたたかみのある、洗練された椅子 も空間を引き締めています。

教会内部
内部
レンガの使い方

随所にみられる個性的なレンガの使い方には、遊び心を感じます。

このあたり家具デザインの才能豊かなカーレ・クリント のセンスによるものなのでしょう。

入り口

出入口の扉。

開口部形状のアーチに合わせててレンガをずらしながら積むことで、彫刻のように立体的なエントランスとしてデザインし、視認性をさりげなく高めています。

扉の羽目板の張り方にも遊び心を感じます。

レンガの役物でつくった雨水用の側溝。こういうさりげないデティールにお国柄を感じます。

アクセス

PG8M+JF コペンハーゲン, デンマーク Copenhagen Municipality

Emdrup 駅から徒歩で15分程ですが、

デンマークには珍しく付近は緩やかな坂となっていますので

近くまではバスを利用してもいいかもしれません。

まとめ

今回はデンマークの教会建築についてご紹介してきたが如何だったでしょうか。

家具やプロダクトが有名なデンマークという国家には

今回紹介した教会建築以外にも優れた建築はたくさんあります。

機を改めて紹介して行こうと思います。

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