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建築×ライフ

北欧建築留学経験者がおすすめしたいコペンハーゲンの美術館

2020-02-17

学生時代に留学とインターンを兼ねてデンマーク、フィンランド、スウェーデンを転々としていた僕は

コペンハーゲンの滞在期間中、それはもうたくさんの美術館を見て回った。

この記事では僕の体験を通して、コペンハーゲンの美術館のすばらしさをお伝えしたい。

コペンハーゲンで美術館を見るべき理由

Hermann Traub

コペンハーゲンで美術館をおとずれるべき理由をまとめると以下の2つである。

1.コペンハーゲンの美術館は古くて新しくて刺激的

2.コペンハーゲンの芸術は、デザイナーに必要な知識と感性を磨いてくれる

以下順に解説していこう。

1.コペンハーゲンの美術館は古くて新しくて刺激的

日本とは違い、建物を一度建てると長く使う文化が根付いているヨーロッパでは、

質の高いリノベーションによるショップや美術館がそこら中に存在している。

デンマークも例に漏れず、街を歩けば本当にため息が出るような

素晴らしいリノベーション空間に遭遇する。

こと美術館においては、展示物の素朴でアンティークな風合いと絶妙にマッチングした居心地の

良い空間が山とある。今回ご紹介する美術館の中にも三百年の歴史を持った建物もある。

どの美術館も巧みにリノベーションされながら、市民に愛され続けているのだ。

場所と時間と文化の力を借りて、美しく発酵したデンマークの美術館の、

押しつけがましさのない公共性はデザインを勉強する上でとても参考になる。

3.コペンハーゲンの芸術はデザイナーに必要な知識と感性を磨いてくれる

ここでぼくの体験を話したい。

コペンハーゲンの美術館、特にデンマークデザインミュージアムを三度めぐって 帰国したあと

ぼくは 身の回りの家具やアートがひどく目につくようになった。

『この椅子、なんかヘンだな』といった具合に。

そもそも椅子がヘンではなのではなく、僕がヘンだったという可能性も捨てきれない。

しかしながら 『身の回りのへんなモノ』 を嗅ぎまわり続けることこそ、

デザイナーに求められる資質であるということを、働き始めた僕は気づく。

家具だったら多分この椅子の方がいいとか、

壁に掛けられたアートなんかはデンマークでみたあの絵が良かったとか。

それまであまり勉強もしてこなかったようなアートや家具などについての

見識もセンスも深まったのだ。以後、室内インテリアやアートなどは自分で制作し、

日本でもよく美術館に足をはこぶようになった。

おかげで、社会人になってから、アートギャラリーの設計や店舗デザインのときに自分で話せるボキャブラリーも増えて、以降どんどん仕事をまかせてもらえるようになった。

留学というと、なかなか目に見えた成果のようなものを残しづらいし、

本人が得たものに対して自覚がないと、自分でも何を得たのかがわからなかったりするが、

ぼくの場合は、『身の回りのへんなモノ』に気付けるようになった感度こそが、

デザイナーとして体得した大切なことであり、ぼくがまっさきに挙げたい留学での成果であったとも言える。

コペハーゲンでおすすめの美術館

ここからは僕が実際におとずれた美術館について紹介していこう。

1.ニイ・カールスベルグ美術館/ny carlsberg Museum

外観

ニューカルスベア美術館は、世界のはじめの一杯でお馴染みのカールスバーグ社のカール・ヤコブセンによるコレクションを展示した美術館である。コレクションには、僕の好きなロダンの彫刻コレクションなんかもあって心がときめいた。

設計者 3人の建築家

この美術館は三棟で構成されており、設計には三人の建築家が携わったとされている。

以下に簡単にまとめてみた。

  • 1897年_一期工事 ヴィルヘルム・ダラーラップ/Vilhelm Dahlerup

  一期工事棟は、建物の外観にもある歴史様式的な主要な母館。

  • 1906年_二期工事 ハック・カンプマン/ Hack Kampmann

  二期工事棟は、ギリシャ・ローマのコレクションを展示する翼廊。

  • 1996年_三期工事 ヘニング・ラーセン(Henning Larsen)

  三期工事棟は、エントランスを背にして敷地左隅に建てられた、小さな塔と回廊による展示室。

見どころ

貴重で、膨大なコレクションに、展示室内の装飾的な天井、床、壁には圧倒されたが、

個人的にはヘニング・ラーセン棟の、シンプルで洗練された回廊が印象に残っている。

既存のレンガ造の壁と展示室の白い壁面を細いアルミサッシ枠を経たトップライトが

新旧を対照的に浮かび上がらせている。

展示室への回廊

アクセス

Dantes Plads 7, 1556 København

デンマークの一大観光名所である都心のチボリ公園の真横に位置しており、アクセスも良好である。

2.デンマークユダヤ美術館/Danish Jewish Museum

外観
設計者

設計は世界各地でユダヤ博物館、美術館の設計を手掛けるユダヤ系のバックグランドをもつ

ダニエル・リベスキンドだ。ホロコーストから生還したという彼が手掛けるデザインは、

鋭利で、破壊的で、行き場のないエネルギーによって満ちている。

ぼくは、デンマークのユダヤ博物館以外にも、

ロサンゼルスのユダヤ博物館に訪れたことがあるが、

そのどの博物館においても、体験した空間の衝撃は今も忘れられない。

見どころ

レンガのヴォールト天井からも分かる通り、こちらの美術館も由緒ある王立図書館の一角をリノベーションして設えられた回廊型の展示空間である。あまり広いとは限られた敷地につくられた美術館だが、

リベスキンドはその造形力によってこの小さな回廊の美術館を

立体的なひとつの彫刻のように設え、僕たちをユダヤの深遠な歴史へと誘う。

どこをとっても同じ空間はない、特別感のある展示空間の中にも

時折走るリズミカルな線形照明はある種旋律的で、

音楽家としてのバックボーンを持つ彼の手腕を感じさせる。

展示室
アクセス

Proviantpassagen 6, 1218 København, Denmark

先程紹介した、ニイ・カールスベルグ美術館側方面からクリスティアン橋(Christians bridge)を渡っると、見えてくる。隣接したトーヴァルセン美術館、クリスチャンボー城も併せて見学できるのでおすすめ。

3.トーヴァルセン美術館/Thorvaldsens Museum

美術館外観
外観

設計者

設計はミケール・ゴトリプ・ビネスブル/Michael Gottlieb Birkner Bindesbøllという

下を噛みそうな名前のデンマーク人の建築家である。元々このビネスプル氏は、

イタリアで彫刻を修めたデンマーク人彫刻家のベルテル・ トーヴァルセンと面識があり、

彼の作品がデンマークへと戻った折にこの美術館を、トーヴァルセンの彫刻作品を展示・収蔵する

施設として設計にあたったそうだ。

見どころ

神の手をもつ天才彫刻家ロダンも愛して止まなかったイタリア彫刻の影響を一身に受けた

トーヴァルセンの力強く躍動的な彫刻の造形も去ることながら

床や天井に緻密に描かれた幾何学模様絵画は彫刻の濃さと拮抗するアクの強さである。

普段は入館料を払う必要があるが、毎週水曜日はなんと無料で閲覧できる。

当時無一文に近かった僕は、水曜日をねらって仕事を途中で早引きして訪れた記憶がある。

何十とある部屋一つ一つで異なる床・壁・天井の柄のパターン
狂気にも近いエネルギーを感じ取った当時学生の僕は、

せっかく抑えた入場料代を、この美術館の設計にまつわる本を購入するために使い果たしたのだった。

今にも動き出しそうなリアルな彫刻と、カラフルな内装

アクセス

Bertel Thorvaldsens Plads 2, 1213 København K, 

先程紹介した、ユダヤ博物館に隣接の好アクセス。是非水曜日を狙って訪れてみては。

4.コペンハーゲン国立美術館/ Statens Museum for Kunst

外観
設計

設計はニイ・カールスベルグ美術館の一期棟の設計を担当した

ウィルヘルム・ダーララップ /Vilhelm Dahlerup である。

クラシカルな列柱や、シンメトリーで、半円アーチを中央にもってくる

彼の徹底したデザインクライテリアはここでも変わらないようだ。

改修工事を行っていて、その時の設計は

C.F. Møller Architects というデンマークの組織設計事務所が請け負ったそうだ。

日本でいうところの日建設計や日本設計といったポジションだろうか。

プロジェクトのチーフアーキテクトとしてイタリア系デンマーク人の

アンナ・マリア・インドリオ /Anna Maria Indrioの名前 が挙げられている。

彼女は同事務所の元パートナー的ポジションだったそう。

見どころ

ヨーロッパやデンマーク国内を中心とした絵画作品 や、彫刻といった幅広いコレクションがなんと無料で公開されている。 ムンクやマティスやピカソあたりのビッグネームの作品も見ごたえはあったのだが、

僕としてはここでしか見れないデンマーク絵画にとても魅力を感じた。

スケーエン派の雄大な自然と透明感のある風景画や、 ヴィルヘルム・ハンマースホイ(Vilhelm Hammershøi) の絵画の静かで、時が止まったような情景には見入ってしまった。

この記事を書いている2020年2月には、東京都美術館で ヴィルヘルム・ハンマースホイ の展示が開催されている。

3月末までの会期だそうなので、近々いってみるつもりだ。

豊富なコレクションが様々に展示されている
アクセス

 Sølvgade 48-50, 1307 København K,

M3 ØsterportかNorreport駅からから徒歩五分。

これまでに紹介した4つの美術館からは少し離れる。

敷地内も広地ので、時間に余裕があるときにゆっくりと見学するのがおススメ。

5. デザインミュージアム・デンマーク Design museum Denmark

外観

設計

少し前までデンマーク工芸博物館という名前で営業していたこの美術館。

この建物も歴史と、数多の設計者の手を経て現在の姿に至る。

竣工は 1757 年とおよそ300年近く前の建物。

竣工当時は国で初めてのパブリックな王立病院として建てられた。

設計はデンマークの王立案件を任されていた ニコライ・アイクトヴィズ / Nicolai Eigtved

建築家であり建築作家として理論と実践でデンマーク建築に貢献したローリッズ・ド・トゥラー Laurids de Thurah という二人の建築家によるものだったとされている。

この外観は当時の流行である、ロココ的建築様式の影を遺したものだ。

その後、デンマークで最も美しいと言われる協会グルント・ヴィークス教会の設計者である、

カーレ・クリント/Kaare Klintイバル・ベンツェン/Ivar Bentsenらによって

現在の回廊型の美術館に設えられた。

見どころ

ひとつながりの廊下には、往年の北欧名作家具が とにかく圧倒的物量をもってして並べられている。

アルネ・ヤコブセン、 カーレ・クリント, ポール・ヘニングセン ,ハンス・ウェグナー、、

日本でも目にしたことのあるなじみ深い椅子や、見たこともないような奇抜な椅子まで本当に様々である。

貴重な制作の裏側の資料や、時代やデザイン流派や解説などといったコンテンツも充実している。

当時の写真のログをみると、僕はこの美術館に気が付けば三時間以上滞在していて、

しかも日を改めて三度も訪れている。。。

建築・家具・デザイン好きには、夢のような場所なのだ。

往年の名作家具が展示されているギャラリー
アクセス

 Bredgade 68, 1260 København

地下鉄のMarble Church駅から歩いて五分程度。

近くにあるChurchill公園も気持ちがいいので、美術館鑑賞に疲れたときには休憩にいいかもしれない。

まとめ

コペンハーゲンで見るべき美術館をご紹介してきたが,いかがだっただろうか。

コペンハーゲンの美術館は、どれも歴史ある建物の巧みなリノベーション術によって

美術館そのものが魅力的な展示物となっている。

また、それぞれ立地も近いので、大変回りやすい。

コペンハーゲンは日本からすると遠い異国であるように思えるが、

コペンハーゲンのカルチャーが日本にも馴染み深いものであることは僕達の身の回りをみればわかる。

旅行や留学等でコペンハーゲンに立寄った際には今回ご紹介した美術館を巡ることをオススメしたい。

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