
こんな疑問にお答えします。
本記事の内容
- 点線面の概要
- 点線面の見どころ
- 点線面と合わせて読みたい本
本記事を読めば話題の「点・線・面」の概要や、関連本まで網羅出来ます!
「建築×本」関連記事
-
-
ゲニウス・ロキとは?建築との関係は?3分でわかる概要と関連書籍
続きを見る
-
-
建築実務初心者おすすめの本まとめ
続きを見る
もくじ
「点・線・面」の概要
2019年に完成した国立競技場という国家プロジェクトを手掛けた
話題の建築家隈研吾氏が2020年2月に出版した書籍です。
隈さんの文章は親しみやすく、「負ける建築」や「小さな建築」といったたくさんの自著や寄稿を執筆してきた
作家としての顔も持っています。本書は今までの隈さん自身の建築哲学をより明快に、より包括的に書ききった1冊であるとも言えます。
「点・線・面」の著者 隈研吾とは(本書より引用)

1954年(昭和29年)、神奈川県生まれ。東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修了。コロンビア大学建築・都市計画学科客員研究員をつとめた後、90年、隈研吾建築都市設計事務所を設立する。(中略) 近年注目を集める作品として、中国美術学院民芸博物館(2015年),V &Aダンディ(2018年),国立競技場(2019年)などがある。
「点・線・面」隈研吾
隈研吾「点・線・面」の見どころ

カンディンスキーと隈研吾の「点・線・面」
本書のタイトルにもなっている「点・線・面」とは、本文中でも述べられているように、
著者が敬愛するロシアのワシリー・カンディンスキーという画家の
1922年の名著「点と線から面へ」に由来するものです。
このカンディンスキーの著作は、1922年6月からドイツのバウハウスで
行われた講義を基にして作られた本です。
-
-
5分でわかる|BAUHAUS(バウハウス)まとめ|概要を現役建築家が解説
続きを見る
その内容は、美術から、建築、音楽といった多様なジャンルを点・線・面といった構成因子にカテゴライズして
横断的に論じていくという大変に野心的な一冊です。
しかし、著者は本文中で、このカンディンスキーの
「点と線から面へ」に対して、愛を持って退屈である。と述べています。
読後感は必ずしも芳しくなかった。(中略)点・線・面という三要素を用いたコンポジション分析が退屈であった。
点・線・面 本文より引用
著者は、カンディンスキーの「点と線から面へ」を反面教師としながらも、
自身の建築だけでなく様々な建築や哲学について「点・線・面」というカテゴリーを敷衍しながら頁を進めて行きます。
なぜなら、この「点・線・面」という分類が、
ニュートン力学から量子力学までの物理学の変遷と、モダニズム勃興の近代建築からその後の現代建築についてまでを
まるっと語れてしまうことを著者は発見したからです。
ここが、本書の慧眼であるのですが、量子力学やニュートン力学といった物理世界を、
本書では、点線面を軸にした建築論にまで結び付けているのです。
この視点は、実は隈さんの師の原広司さんの推薦である
物理学者の大栗博司さんの、超弦理論に関する本を読む中で深めていった考察であるようです。
物理学に文化人類学、圧倒的な引用による横断的な建築論
最近ダンテの神曲(地獄篇)を読んだのですが、博学のダンテが書いた本書は、数多の引用に溢れていて、
西洋史の教養のない僕にとっては脚注なくしては楽しむことができませんでした。
ハイコンテクストな書物は読み手を試すものですが、こうした引用は、実に紙面以上の知的広がりを僕たちに与えてくれるものです。
博学の隈さんが綴る本作も、あらゆる分野の論理が、初学者にもとてもわかりやすく、さらりと引用されています。
前述の量子力学以降、以前の物理学世界だけでなく、建築史や、数学、文化人類学、美学、哲学といった
様々な分野を引き、要点を論じながらも、自身の建築論へと鮮やかに回帰する手腕はさすがです。
隈研吾「点・線・面」と合わせて読みたい本
ここでは、今まで紹介してきた本に加え、
合わせて読んでおきたい本をいくつか挙げてみました。
ジル・ドゥルーズ「襞:ライプニッツとバロック」
本文中にある固体と液体の相対性に関する論考が、
「点・線・面」のカンディンスキーの論考の延長上にあることを本書では指摘しています。
面白いのはこの論考がバロック建築にインスピレーションを受けている点です。
ラインズ「線の文化史」
生きた線としての「糸」と死んだ線としての「軌跡」という二つの線の概念を論じる本書も、
著者が本書の発想に影響を与えてくれた書であるとして紹介しています。
アルファベット そして アルゴリズム: 表記法による建築――ルネサンスからデジタル革命へ
コンピューテショナルデザインの登場によって、建築は引き算的デザインから足し算的デザインの時代へと
変化したという、センセーショナルな考察を展開する一冊です。
建築のスケールについての考えるときに、だいたい話題に上がるのが本著ですが、
本書を手掛けたコールハースだけでなく、磯崎新など、当時の建築家がペシミスティックな論調で現代都市を考察していたことに対し、
隈さんは、自分はアジアに生まれた自分を認め、アジアを批判しながらも可能性と未来を考えたいというスタンスを取っています。
隈研吾「点・線・面」をおすすめしたい人

これまで紹介した記事から僕がお勧めしたい読者を想定してみた。
- 近・現代建築史を、網羅的に、俯瞰して読みたい人。
- 話題の隈研吾の建築や哲学を深いところから勉強したい人。
- デザインを生業としている人。
- 建築を専攻しているけど何を読めばいいかわからない人。
まとめ
話題の建築家/隈研吾の新書「点・線・面」は、
著者の自作と、様々な知の体系を「点・線・面」とう視点で解き明かす、
著者の建築哲学をより明快に打ち出した一冊でしたね。
ちなみに、点線面と同時期に発売された「人の住処」は、著者の幼少期から現在までを辿った自伝史的一冊ですので、
隈さんファンには是非とも合わせて読んで頂きたい1冊です。
当ブログでは映画好き建築家の僕が、建築視点で映画や用語について解説していますので合わせてぜひご覧ください!
関連記事
-
-
ブレードランナーの都市デザイン「シド・ミード」が携わった映画作品8選
続きを見る
-
-
【映画と地下空間】おすすめ映画11選を映画好き建築家が紹介
続きを見る
-
-
スター・ウォーズ建築9選|映画好き建築家が解説
続きを見る